業務用の出汁を選ぶ際、素材の特性を活かすことで、料理の味を一層引き立てることができます。まず、出汁のベースとなる素材には、鰹節、煮干し、昆布などがあります。これらの素材それぞれが、独自の味わいや香りを持っており、料理に深みやコク、風味を持たせてくれます。だしを選ぶ際には、素材の特性を理解し、料理に合っただしを選ぶことが大切です。中嶋屋本店では、出汁サンプルでの試飲もできますので、ぜひお気軽にお試しください。

素材の特性で選ぶ

鰹節

かつお節

カツオを原料とするのが、かつお節の基本形。
産地は鹿児島県の枕崎(薩摩節)、静岡県の焼津(焼津節)や沼津(伊豆節)、高知県の土佐潜水(土佐節)などがある。原料には脂肪の量が1~2%のカツオが適しており、とくに九州や四国近海で3~5月に獲れたカツオで作ったものは「春節」と呼ばれ、秋の三陸ものから作る「秋節」よりも品質がよい。脂肪が多すぎるものは油節と呼ばれ、出汁が濁りやすい。(最近は南洋で獲れる冷凍ものが多い。)

まぐろ節

脂の少ないキハダマグロで作るのがまぐろ節。
(関東ではめじ節、関西ではしび節と呼ぶ) 関西での需要が多くほとんどが荒節に加工される。

そうだ節

マルソウダガツオやヒラソウダガツオといったソウダガツオの仲間でつくるかつお節。(関西ではマルソウダカツオのことをメジカ[目近節]と呼んでいる。また1月~3月に獲れる大型なソウダガツオで作る製品は、[寒目近]という。)

さば節

ゴマサバやヒラサバから作るかつお節。近海で獲れたサバをつかう。(ヒラサバよりもゴマサバのほうがあっさりした出しが取れる)。

むろあじ節

ムロアジから作るかつお節 (八丁ミソなどと合う) 産地は熊本県と鹿児島県だが生産量は少なくなってきた。

いわし節

マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシを原料とする。カタクチイワシ、マイワシは独特のくせがある。ウルメイワシ製から引く出しは甘味がある。カタクチイワシ製は淡白な味わい。

「製法での選別」も可能です

枯れ節

切り身にしたカツオをゆでた後、骨を抜いて煙りでいぶして乾燥させる。全体に均等に乾燥させるため休み休み、日数をかけていぶしていく。いぶし終わったカツオは、煙りのタールがついて真っ黒になる。これを落として、カビづけする。1度カビづけしたら天日干しにしてカビを落とし、再びカビつけをするというふうに4度5度と繰り返す。出来上がった枯れ節は細かい粉の吹いた状態となる。青カビが生えた後、灰色のカビに替わる。カビはかつお節の水分や脂肪を分解して独特の香りをつけてくれる。

荒節

カビをつけずに、 いぶしただけのかつお節。

裸節

荒節の表皮を削り落とした、薄茶色の状態のかつお節。

なまり節

カツオを2、3回いぶしただけの生乾きの状態。だしはとれず、煮物等にして食べる。

見た目で選ぶ

亀節

切り身をそのまま材料に使うのが亀節。1尾3kg以下のカツオやマグロはもっぱら亀節となる。

本節…(雄節/雌節)

3枚におろした切り身を血合いのところでさらに縦半分に割る。こうして、計4本のかつお節を作るのが本節。背側の身が2本(雄節<背節>)腹側の身が2本(雌節<腹節>)とれる。雄節のほうが脂肪が少ないために澄んだだしが引け、雌節は旨みのあるだしがひける。

割節、丸節、笹目近節、ぽっくり節等がある。

煮干し

片口いわし煮干し

カタクチイワシから作られる煮干し。 生産量が多く、関西で評価が高い。煮干しの別名「だしじゃこ」は、塩ゆでして天日干しした稚魚すべてを指す言葉だった。カタクチイワシから作った煮干しは「いりこ」と呼んで区別されていたが、今は全て一緒にされている。

平子(ヒラゴ)煮干し

マイワシから作る煮干しのこと。ちなみに平子とは5cm程度の大きさのマイワシを指す。片口煮干しよりも、サラッとしただしがとれ、関東で評価が高い。

うるめ煮干し

ウルメイワシから作る煮干しで、脂肪が少ない為、だしは薄味。大きく育ったウルメイワシは丸干しに回されてしまうため、生産量は最も少ない。

混じり

日本海などは先の三種のいわしが混獲される地方では、一緒に加工してしまうので、一括して出荷される。

見た目で選ぶ

青手(青口)

背の色が青黒っぽい製品を指す。関東市場で好まれる。

白手(白口)

背の色が白っぽい製品で関西向き。

かえり煮干し

3~4cm程度の稚魚から作る煮干し。種類は主にカタクイワシ。脂肪が少なく、くさみも少ないが価格が高い。ちなみにもっと小さな1~3cmの大きさのイワシの煮干しがチリメンジャコ。

昆布

真昆布

道南の渡島半島の東側、室蘭から函館の間で採れる昆布。
断面の色から『白口浜』『黒口浜』『本場折浜』『茅部折浜』などと呼ぶ。青森、岩手等でも採れるが主に加工用。真昆布のだしは大阪方面で多く使われ、くせがないだしが引ける。

利尻昆布

真昆布と植物的には同じ昆布。
道北で採れる昆布で伸して乾かさないため、縁がよれて細く見える。日本海側(苫前・トママエ〜天塩・テシオの間)で採れるものを「天塩産」、オホーツク海岸(抜海・バッカイ~稚内・ワッカナイを経て、紋別・モンベツまで)で採れるものを「稚内産」、礼文島と利尻島産を「利尻産」と呼び分ける。京都方面で評価が 高く、真昆布よりも固いが、澄んだだしが引ける。

羅臼昆布

知床半島の東側、根室海峡に面した羅臼町周辺のみで採れる昆布。幅が大変広く、肉が薄い。表面の色で「黒口」と「赤口」に区別されるが、品質に差はあまりない。だしの外見は黄色みを帯びた濁った状態だが、旨みはもっとも強い。

日高昆布

正式名は「三石昆布」だが、日高地方沿岸で採れるので、この愛称で呼ばれる。普通の昆布の寿命は2年だがこの昆布は3年。ただし主に2年ものが出荷される。道南の襟裳岬を挟んで東西の太平洋岸が産地。柔らかくて、早く煮えるのが特徴。関東ではだし昆布としても愛用される。

長昆布

三石昆布の仲間で、生産量はもっとも多く、釧路から根室にかけての道東で採れる。10M以上に育つものもある。佃煮、昆布巻の加工原料とされるが、肉厚のものはだし昆布として使える。

細目昆布

積丹半島・シャコタンを中心に道西の留萌から檜山に至る日本海岸で採れる昆布で、寿命は1年。粘りが強いので、ほとんどがとろろ昆布として加工されるが、品質のよいものは利尻昆布の代わりに使われる。

育ち方、採り方で選ぶ

天然昆布

船上から棹を突っ込んでからませ、ねじりながら、岩からはずして採る。採った昆布は乾場に数時間並べて天日乾燥させるか、乾燥機にかけて出荷される。尚昆布は海の栄養を全身から吸って育つため、採れた浜によって品質に差がある。

養殖昆布

魚場にロープを流して、自然に胞子がつくのを待ち、随時植え替えて育てた昆布。

促成昆布

昆布の胞子から種苗を育て、ロープに移植して育てた昆布。種苗を育てる時に光りや温度、培養液等を管理して、1年で大きく育ててしまうため1年養殖とも呼ぶ。これは柔らかく、肉薄で、だしの出方もあまりよくない。

棹前

5月1日から解禁日前までにまびかれた2年ものの昆布。細くて柔らかい。

夏採り (走り)

解禁日から9月10日前後に採られたもの。

秋採り(后採れ)

9月10日前後より、終漁期までに採られたもの。 夏採りのものよりも固くなる。

水昆布

発生後1年目の若い昆布。身が薄く、だしの出も悪い。

囲い(ひね)

前年度に生産された昆布。年越しする間に旨みがひきだされるため1部に人気がある。

加工法で選ぶ

爪昆布

とろろ昆布やおぼろ昆布は、酢につけて柔らかくした昆布を専用 の包丁で削って作るが、その時、固定していた両端の部分。爪のような形をしているのでこの名がある。

根昆布

岩についていた昆布の根元の部分。昆布は根元から成長していくため、厚みがある。味が濃く、だしがよく出る。又薬用としても使われる。

見た目で選ぶ

元揃い

平たく伸ばして乾燥させ、葉元を三日月型に切り揃えて束ねたもの。 白口と黒口浜の真昆布、羅臼昆布で見られる出荷スタイル。

折り昆布

平たく伸ばして乾燥させ、55cmの長さに折り込んだもの。

長切り

一定の長さに揃えて束ねたもので、伸ばして乾燥させないため、縁がよれている。利尻・目高・長昆布は全てこの形。

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